入試の国語で、いちばん時間を失う問題をご存じですか。——記述ではありません。抜き出し問題です。
こんにちは。塾業界で20年以上、中学受験塾の塾長も務めてきたまつもも先生です。
「本文を読まなくていいシリーズ」の第5弾。今日は抜き出し問題です。一見やさしそうなのに、実は多くの受験生が引っかかる問題。その理由と、正しい向き合い方をお伝えします。
論説文の記述は、ほとんど「抜き出し」
まず、うれしい話から。
論説文(説明文)の記述問題は、ほぼ抜き出しです。
前回、記述は「考えるのではなく探す」とお伝えしました。論説文では、これがさらに徹底しています。筆者の考えは、すでに本文にはっきり書かれている。だから答えは、本文の言葉をほぼそのまま使って作れるのです。
自分の言葉でうまくまとめようとしなくていい。本文から持ってきて、文末を整えるだけ。そう考えると、論説文の記述はぐっと気楽になります。
だから、抜き出し問題も「記述と同じ手順」で解く
ここが今日の本題です。
抜き出し問題も、記述と同じ手順で解きます。つまり——先に、自分で答えの見当をつける。
- 設問を読んで、何を探すのかを確かめる
- 本文に戻り、「答えはこういう内容だろう」と自分で見当をつける
- その内容が書いてありそうな場所を探す
- 見つけたら、指定の字数に合うように範囲を決める
大事なのは2番です。ここを飛ばすと、抜き出しは地獄になります。
やってはいけない解き方:字数を数えながら探す
いちばんダメなのが、これです。
指定された字数を頼りに、はじめから本文をひたすら探す。
「十五字……十五字……」とつぶやきながら、本文を上から下まで、指で数えながらさまよう。——これでは、時間がいくらあっても足りません。
字数は、探すための道具ではありません。見つけたあとに、範囲を決めるための目安です。順番が逆になると、途端に迷子になります。
まず内容の見当をつける。字数はあとから使う。この順番を、絶対に守ってください。
見当がつかなければ、いったん飛ばす
そして、今日いちばんお伝えしたいことです。
答えの見当がつかない抜き出し問題は、いったん飛ばしましょう。
入試で時間配分をミスする原因として、いちばん多いのがこれです。抜き出しを探しているうちに、時間が経ってしまうパターン。
抜き出し問題には、恐ろしい性質があります。「探せば見つかるかもしれない」と思えてしまうのです。記述なら「わからない」と諦めがつく。選択肢なら勘で選べる。でも抜き出しは、「あと少し探せば……」と粘れてしまう。
そして5分、10分と溶けていき——気がつけば、解けたはずの後半の問題に、たどり着けないまま終わる。
これが、いちばんもったいない負け方です。
「1分ルール」を決めておく
対策はかんたんです。時間を決めておくこと。
たとえば「1分探して見つからなければ、印をつけて次へ」。このルールを決めておくだけで、時間の崩壊は防げます。
そして——飛ばしても、戻ってこられます。
他の問題を解いているうちに、文章の理解が深まって、「あ、さっきのはあそこだ」と急に見えることがよくあります。実際、後から戻って解けた、というケースは本当に多いのです。
飛ばすのは、逃げではありません。戻ってくるための作戦です。
探すときは、傍線部の近くから
もうひとつ、実戦的なコツを。
探す範囲は、傍線部の近くから、少しずつ外へ広げてください。
いきなり文章の頭から探し始めると、遠回りになります。近いところから、円を広げるように探す——これで発見までの時間が短くなります。
家庭では、時間を計ってみる
家庭でおすすめなのは、抜き出し問題だけ、時間を計ってみることです。
「この問題、何分かかった?」——本人が思っているより、ずっと長い時間をかけていることに驚くはずです。まずは、そこに気づくのが第一歩。
そのうえで、こう決めてあげてください。「1分探して見つからなかったら、飛ばして次いこう」
この一言が、本番で何点も守ってくれます。
まとめ
- 論説文の記述は、ほぼ抜き出し——本文の言葉を使えばいい
- 抜き出しも記述と同じ手順——先に自分で答えの見当をつける
- 字数を頼りに探し始めない。字数は見つけたあとの目安
- 見当がつかなければ、いったん飛ばす(入試の時間配分が崩れる最大の原因)
- 1分ルールを決めておく。飛ばすのは、戻ってくるための作戦
このシリーズを5回続けてきて、実は毎回、同じことをお伝えしてきました。
答えは本文にある。だから、先に自分の答えを作ってから、探しにいく。
設問を先に読むのも、選択肢を後から見るのも、抜き出しで見当をつけるのも——全部この一つのことです。テクニックはいくつもあるようで、芯は一本。「なんとなく」をやめて、自分の中に答えの形を持ってから動く。それだけです。
次のテストで、ぜひ試してみてください。

コメント