「あれ、この人、さっきと違う人?」——物語文を読んでいて、お子さんがそう混乱していたら、それは同じ人物が、別の呼び方で出てきているだけかもしれません。
こんにちは。塾業界で20年以上、中学受験塾の塾長も務めてきたまつもも先生です。
今日は、物語文を読むときに、意外とつまずきの原因になる**「呼び方の変化」**についてお話しします。
同じ人物なのに、名前が変わる
物語文では、同じ登場人物が、何通りもの呼び方で出てきます。
たとえば、こんな具合です。
太郎さんは、部屋のドアを開けた。
「お兄ちゃん、宿題手伝って」
ぼくは、机の上の教科書を片づけた。
——お気づきでしょうか。「太郎さん」「お兄ちゃん」「ぼく」は、全部、同じ人物です。名前がコロコロ変わっているように見えて、実は誰も新たに登場していません。
大人はこの切り替えに慣れていますが、子どもは戸惑います。「太郎さんって誰?」「お兄ちゃんって新しい人?」——ここで混乱すると、そのあとの場面が全部わからなくなってしまいます。
なぜ、呼び方が変わるのか
理由は、誰の目線で語られているかによって、呼び方が変わるからです。
説明の文では、名前
物語のナレーション部分では、「太郎さん」のように、名前や、少し離れた呼び方で書かれることが多いです。
主人公の目線では、「ぼく」「わたし」
もし太郎さんが主人公で、主人公の目線で語られる文章(一人称)なら、説明の文でも「ぼく」「わたし」と書かれます。自分で自分を名前で呼ぶ人はいませんよね。それと同じです。
他の登場人物が呼ぶときは、関係性で変わる
セリフの中で、他の登場人物が主人公を呼ぶときは、その人との関係性によって呼び方が変わります。
- 妹が呼ぶなら → 「お兄ちゃん」
- 友だちが呼ぶなら → 「太郎」「太郎くん」
- 先生が呼ぶなら → 「太郎さん」「山田くん」
- お母さんが呼ぶなら → 「太郎」
同じ人でも、呼ぶ人との関係で、呼び方は変わるのです。これは、実際の私たちの生活でも同じですよね。あなた自身も、家族からの呼ばれ方と、職場での呼ばれ方は違うはずです。
呼び方の変化は、実は「ヒント」でもある
ここが、今日いちばんお伝えしたいことです。
呼び方の変化は、混乱の原因であると同時に、関係性を教えてくれるヒントでもあります。
「お兄ちゃん」と呼ばれていれば、呼んだ人はきょうだいだとわかります。「太郎さん」と少し丁寧に呼ばれていれば、呼んだ人はあまり親しくない、あるいは目上の人かもしれません。
呼び方を手がかりに、登場人物どうしの関係を読み取ることができるのです。これは、人物関係をつかむ、立派な読解のテクニックです。
新しい名前が出てきたら、まず確認する
対策は、シンプルです。
新しい呼び方が出てきたら、「これは新しい人物か、それとも今まで出てきた人の別の呼び方か」を、いったん確認する。
多くの場合、文章の前後を見れば判断できます。
太郎さんは、部屋のドアを開けた。「お兄ちゃん、宿題手伝って」と、妹の花子が言った。
——ここで「花子」という別の人物が登場し、その花子が「お兄ちゃん」と呼んでいます。ということは、「お兄ちゃん」は太郎さんのことだと確認できます。前後の文脈が、答えを教えてくれるのです。
「人物メモ」を作りながら読む
長い物語文や、登場人物が多い文章では、人物メモを作りながら読むのがおすすめです。
やり方はかんたんです。文章の余白に、こう書いていきます。
- 太郎さん=ぼく(主人公)
- 花子=妹
- 山田先生=担任
一度、「この人はこの呼び方もされる」と整理しておけば、そのあと呼び方が変わっても迷いません。人物関係の記事でお伝えした「誰が出てきて、どういう関係か」をおさえる——その具体的なやり方が、この人物メモです。
家庭では「これ、誰のこと?」
家庭でおすすめなのは、音読しながらこう聞くことです。
「今、”お兄ちゃん”って出てきたけど、これ誰のこと?」
答えられたら、**「なんでそう思った?」**と続けます。「さっき花子が呼んでたから」と答えられれば、もう人物関係を正確につかめています。
呼び方が変わるたびに、こういう小さな確認を重ねると、人物を見失わずに読む力が育ちます。
まとめ
- 物語文では、同じ人物が、何通りもの呼び方で登場する
- 説明の文では名前、主人公目線なら**「ぼく」「わたし」**
- 他の人物が呼ぶときは、その人との関係性で呼び方が変わる(きょうだいなら「お兄ちゃん」など)
- 呼び方の変化は、人物どうしの関係を読み取るヒントにもなる
- 新しい呼び方が出たら、新しい人物か、既出の人の別の呼び方かを確認する
- 迷ったら、人物メモを作りながら読む
次に物語文を読むとき、名前や呼び方が変わるたびに、「これは誰のこと?」と一度立ち止まってみてください。人物がつながって見えてくると、物語文はぐっと読みやすくなります。

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