【塾講師の実話】「日曜日は勉強禁止」と約束したら、第一志望に合格した話

「日曜日は、絶対に勉強してはいけません。

三者面談で、私はある生徒にそう言いました。お母さんは、きょとんとした顔をしていました。

こんにちは。塾業界で20年以上、中学受験塾の塾長も務めてきたまつもも先生です。

今日は、やる気を完全に失った5年生が、第一志望に合格するまでの話をします。実際に私が担当した生徒さんの、本当にあった話です。

5年生の春、その子は止まった

その子は、4年生のときは成績優秀でした。活発で、よくできる子。

ところが5年生に上がって、すべてが変わりました。中学受験の5年生は、いちばん負荷がかかる学年です。

  • 授業のコマ数が増える
  • 宿題の量が一気に増える
  • テストの難度が上がり、内容も難しくなる

4年生までのやり方では、まわらなくなる。——多くの子がここでつまずきます。彼も、その一人でした。

そして、こうなりました。

  • 宿題をやってこない
  • テストで白紙が目立つ
  • 家では、親子ゲンカが絶えない

完全に、やる気を失っていました。

分かれ道は、お母さんが相談に来てくれたこと

この状況で、いちばん大きかったこと。それは、お母さんが相談に来てくれたことです。

こういうとき、ご家庭は追い込まれています。「なんとかしなきゃ」と思うほど、家では叱ってしまう。そして、その様子を塾に言うのは、正直しんどいものです。「うちの子ができないと思われたくない」——そう感じるのは、自然なことだと思います。

でも、お母さんは相談に来てくれました。そこが分かれ道でした。

三者面談で、本人を真ん中に置く

私がまずやったのは、三者面談です。保護者と、私と、そして本人

大人だけで決めた計画は、まず守られません。本人が「うん」と言った約束でなければ、続かないからです。だから、その子を中心に話し合いました。

そして、勉強スケジュールを一緒に作りました。渡すのではなく、一緒に。

そして「勉強してはいけない日」を決めた

そのスケジュールに、私はふつうとは逆のものを書き込みました。

絶対に勉強してはいけない日と、時間。

具体的には、こうです。

  • 日曜日は、遊ぶ日。勉強は禁止。
  • もし本人が勉強しようとしたら、お母さんが止める
  • むしろ、遊びなさいと言う

そして彼に聞きました。「日曜日は絶対に勉強しないで、遊ぶ。約束できる?

その子は、少し笑って「できる」と答えました。

種明かし:本当のねらい

実はこれ、月曜日から土曜日で、宿題をためずにやるための作戦でした。

日曜日が使えない。だから、平日のうちに終わらせるしかない。——「宿題をためるな」と何度言っても動かなかったものが、日曜日を封じるだけで動き出したのです。

「やりなさい」ではなく、「やらない日を決める」。同じことを目指しているのに、子どもの受け取り方はまったく違いました。

なぜ、これが効いたのか

あとから振り返ると、効いた理由は3つあったと思います。

①逃げ場ができた

やる気を失った子の頭の中は、「終わりのない勉強」でいっぱいです。毎日毎日、宿題とテスト。この先ずっと続くように感じている。

そこに「日曜日は遊んでいい」——確実な逃げ場ができました。しかも、うしろめたさゼロで休める。これは、想像以上に大きいことです。

②自分で約束した

押しつけられた計画ではなく、自分が「できる」と言った約束でした。だから守れた。三者面談で本人に聞いたのは、このためです。

③お母さんの役割が変わった

これがいちばん大きかったかもしれません。

それまでお母さんは、「勉強させる人」でした。だから顔を合わせればケンカになる。

でも、この作戦のあとは——「勉強を止める人」になりました。「今日は日曜やから、やったらあかんよ」。

親子の関係が、ひっくり返ったのです。ケンカは減り、家の空気が変わりました。やる気は、家の空気から戻ってきます。

オープンスクールで、行きたい学校ができた

もうひとつ、大きな出来事がありました。ある学校のオープンスクールに行ってみることにしたのです。

中学受験の勉強は、5年生にとっては「よくわからないもののために、しんどいことをする」時間になりがちです。何のためにやっているのか、実感がない。

でも、実際に学校を見ると変わります。校舎、部活、在校生の姿。「ここに通いたい」という具体的な絵が、頭の中にできる。

その子にとって、この日から勉強は「やらされるもの」ではなくなりました。行きたい場所への道になったのです。

そして、第一志望へ

そこからは、見違えるようでした。

宿題は平日のうちに終わるようになり、宿題を一番いいタイミングでやっているので成績も上がり、そして——第一志望校に合格しました。

特別な教材も、追加の授業もありません。やったのは、スケジュールを一緒に作り、休む日を決め、行きたい学校を見にいった。それだけです。

保護者の方へ伝えたいこと

この話から、お伝えしたいことが3つあります。

①やる気は、根性ではなく仕組みで戻る

「やる気を出しなさい」で出るなら、誰も苦労しません。その子が変わったのは、気合いではなく仕組みを変えたからです。休む日を決める、あこがれの学校を見にいく——できるのは、そういう具体的なことです。

②止まったときは、詰めるのではなく、抜く

まわらなくなった子に、さらに課題を足しても動きません。減らす・止める・休ませる。遠回りに見えて、そこからしか再起動しません。

③しんどくなったら、相談してください

そして何より——お母さんが相談に来てくれたから、一緒に考えることができました。

塾の先生でも、学校の先生でもかまいません。家の中だけで抱えていると、親子とも逃げ場がなくなります。「うちの子だけかも」と思っている状態は、たいてい、うちの子だけではありません。

5年生でやる気を失う子は、本当にたくさんいます。それは、その子がダメなのではなく、5年生がそういう学年だからです。

まとめ

  1. 5年生は、コマ数・宿題・テストの難度が一気に上がる学年。止まる子は多い
  2. 分かれ道は、相談してくれたこと
  3. 三者面談で、本人を真ん中に——自分で言った約束は守れる
  4. 「勉強してはいけない日」を作る(ねらいは、平日にためずにやること)
  5. 親の役割が「やらせる人」から「止める人」に変わると、家の空気が変わる
  6. オープンスクールで、勉強が「行きたい場所への道」になる

もし今、お子さんが止まっているなら。——詰めるのではなく、抜いてみてください。そして、しんどいときは身近な先生に相談してください。

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