言った直後に「あぁ、言ってしまった」と思ったこと、ありませんか。
こんにちは。塾業界で20年以上、中学受験塾の塾長も務めてきたまつもも先生です。
今日は、つい言ってしまいがちな声かけと、その言い換えについてお話しします。
先に申し上げておきますが、これは保護者の方を責める記事ではありません。どれも、お子さんを思うからこそ出てくる言葉です。私自身、現場で似たことを言ってしまう日があります。
ただ、言い換えを知っているかどうかで、伝わり方はずいぶん変わります。引き出しをひとつ増やすつもりで、読んでみてください。
NG①「勉強しなさい」
いちばん多い声かけです。そして、子どもがいちばん動かない声かけでもあります。
理由は、抽象的すぎるから。
「勉強」と言われても、子どもの頭の中では何を、どれだけ、どこからが決まっていません。やることが見えないまま「やりなさい」と言われると、人は動けません。大人だって、「仕事しなさい」とだけ言われたら固まりますよね。
言い換え:具体的に、ひとつだけ
○「算数の計算問題、1ページやろう」
○「漢字を10問だけやってから、ごはんにしよう」
科目・量・タイミングを具体的に。しかも小さく。「1ページ」「10問」なら、始められます。
そして、いちばんの良い点は始められることです。勉強は、始めてしまえば続きます。動き出せないところでつまずいている子には、「何をやるか」「何からやるか」を一緒に決めてあげるだけで十分なのです。
NG②「なんで間違えたの?」
これも、つい出てしまう言葉です。
でも考えてみてください。理由がわかっていたら、間違えていません。だから子どもは答えられず、「責められた」という記憶だけが残ります。
そして、間違いを見せたら怒られると学んだ子は、間違いをかくすようになります。答えを消して書き換える、テストを見せない——そうなると、直しようがありません。
言い換え:一緒に原因を探る
○「この問題、もう一度読んでみよう」
○「お、ここで間違えてたんだね。今わかってよかったね」
もう一度設問を読むと、子どもは自分で間違いに気付くことが多いです。責めるのではなく、一緒に探す。間違い直しの記事でもお伝えしましたが、ここが伸びる子と伸びない子の分かれ目です。
NG③「成績が落ちたら、塾を辞めさせるよ」
これは、脅しです。
正直に言うと、短期的には効果が出ることもあります。あわてて勉強するようになる子もいる。でも、望ましい形ではありません。
理由は2つあります。
ひとつは、長続きしないこと。恐怖で動くエネルギーは、すぐ切れます。そして脅しは、だんだん効かなくなるので、どんどん強い言葉が必要になります。
もうひとつは、勉強が「罰を避けるためのもの」になってしまうこと。本来、勉強は自分のためにするものです。「怒られないためにやる」になった子は、見ていないところでやらなくなります。
言い換え:条件ではなく、一緒に考える
○「最近しんどそうだけど、どうしたい?」
○「このままだと苦しいから、やり方を一緒に考えよう」
うまくいかないときは、本人がいちばん困っています。追い詰めるのではなく、作戦会議に切り替える。以前、やる気を失った5年生の話を書きましたが、あの子が変わったのも、詰めるのをやめて一緒に計画を立てたからでした。
NG④「お姉ちゃんはできたのに」「お母さんの頃は」
他人との比較です。きょうだい、友だち、そして親自身の子ども時代。
これは、ほぼ確実に自信を削ります。
「自分は劣っている」と刷り込まれた子は、挑戦しなくなります。どうせできないと思っていたら、努力する意味がなくなるからです。そして比較された相手(お姉ちゃん、お兄ちゃん)との関係まで、こじれてしまうことがあります。
きょうだいでも、得意なことも伸びる時期もちがいます。同じ家で育っても、まったく別の人です。
言い換え:比べるなら「前のこの子」と
○「前より漢字、書けるようになったね」
○「去年のあなたなら、これ解けなかったよ」
比較そのものが悪いのではありません。比べる相手を変えるだけでいいのです。過去の本人と比べると、比較は「伸びの発見」になります。
NG声かけに共通していること
4つ並べてみて、共通点があります。
NGな声かけは、「子どもを動かそうとする言葉」です。
効果的な声かけは、「一緒に考える言葉」です。
「しなさい」「なんで」「〜しないと」「〜はできたのに」——どれも、大人が子どもを外から押しています。押されたぶん、子どもは踏ん張るか、逃げるかしかありません。
一方、「どうする?」「どう考えた?」「一緒に考えよう」は、同じ方向を向いています。同じことを伝えたいのに、立ち位置がちがう。それだけの差なのです。
最後に:言ってしまった日のこと
ここまで書きましたが、完璧にできる保護者はいません。私も、教室で言葉を間違える日があります。
疲れている日、余裕がない日、心配が大きい日。人は言葉が強くなります。それは、お子さんを大事に思っているからこそです。
もし言ってしまったら、こう伝えてください。
「さっきはきつい言い方してごめんな。心配だったんだよ」
これは、子どもにとってものすごく大きな経験になります。大人でも間違えること、そして謝れることを、目の前で見せてあげられるのですから。
まとめ
- 「勉強しなさい」→ 科目・量を具体的に、小さく(「計算1ページやろう」)
- 「なんで間違えたの」→ 「問題をもう一度読んでみよう」と一緒に原因を探る
- 「塾を辞めさせるよ」→ 脅しは短期しか効かない。「どうしたい?」と作戦会議に
- 「お姉ちゃんはできたのに」→ 比べるなら過去のこの子と
- NGは動かそうとする言葉、効くのは一緒に考える言葉
今日ひとつだけ試すなら、これをどうぞ。「この問題、一緒に読んでみよう?」——それだけで、家の空気が少し変わります。

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