「それ」が指している内容を、十字で抜き出しなさい。
この問題、抜き出し問題でしょうか。——実は、指示語の問題です。
こんにちは。塾業界で20年以上、中学受験塾の塾長も務めてきたまつもも先生です。
今日は、問題の”正体”を見抜くというお話をします。ここを間違えると、正しい道具を使えないまま、時間だけが過ぎていきます。
「抜き出しなさい」は、答え方の指示にすぎない
まず、大事な整理から。
「抜き出しなさい」というのは、”答えの書き方”の指示です。問題の中身ではありません。
- 記述しなさい → 自分の言葉でまとめて書く
- 選びなさい → 記号で答える
- 抜き出しなさい → 本文の言葉をそのまま写す
つまり「抜き出し」は、答案の形を決めているだけ。何を答えるのかは、まったく別の話なのです。
ここを混同すると、こうなります。「抜き出しだから、とりあえず十字のかたまりを探そう」——そして、本文をはじめから終わりまでさまよう。以前お伝えした、時間が溶けていくパターンです。
冒頭の問題の正体
もう一度、冒頭の問題を見てください。
「それ」が指している内容を、十字で抜き出しなさい。
聞かれているのは、「それ」が何を指しているかです。これは、まぎれもなく指示語の問題。
だったら、使う道具は決まっています。指示語の記事でお伝えした手順です。
- 指示語より前を探す(多くは直前)
- 見つけたら、指示語の場所に当てはめて読み直す(代入チェック)
- 意味が通れば、それが答え
そのうえで、十字という条件に合うように範囲を整える。——この順番なら、迷いません。探す場所は「直前」だと決まっているのですから、本文をさまよう必要はないのです。
「抜き出し」の顔をした問題は、他にもある
同じことが、あちこちで起きています。
例①「〜の理由が書かれた部分を抜き出しなさい」
→ 正体は理由の問題。「〜から」「〜ので」「〜ためだ」を探しに行けばいい。
例②「このときの気持ちがわかる部分を抜き出しなさい」
→ 正体は心情の読み取り。セリフ・行動・様子・情景に目を向ける。
例③「筆者の主張が書かれた一文を抜き出しなさい」
→ 正体は主張を見つける問題。「しかし」の後ろ、「つまり」の後ろ、最後の段落——探す場所は決まっています。
例④「〜を言いかえた表現を抜き出しなさい」
→ 正体は言い換えの問題。類義語や、同じ内容を別の言葉で言っている場所を探す。
どれも、「抜き出し」という形にまどわされず、中身が何かを見抜けば、探す場所が決まります。
見抜くコツ:設問を、最後まで、正確に読む
では、どうやって正体を見抜くのか。答えは、単純です。
設問を、最後まで、正確に読むこと。
以前お伝えした通り、国語の失点の多くは読解力ではなく設問の読み落としです。「抜き出しなさい」という語尾だけが目に入って、その前に書かれている「何を」を読み飛ばす。——これが、抜き出し問題で迷子になる本当の原因です。
だから、設問を読むときは、線を引きながら。
「それ」が指している内容を、十字で抜き出しなさい。
↑何を ↑条件
「何を」と「条件」に、それぞれ線を引く。これだけで、問題の正体が見えます。
「探す場所が決まる」ことが、いちばんの武器
正体を見抜くと、何が変わるのか。探す場所が決まります。
- 指示語の問題 → 直前
- 理由の問題 → 傍線部の近く、「から」「ので」のあたり
- 心情の問題 → セリフ・行動・様子
- 主張の問題 → 「しかし」の後ろ、最後の段落
抜き出しで時間を失う子は、探す場所が決まっていないからさまようのです。逆に言えば、正体さえ見抜ければ、抜き出しはいちばん速く解ける問題にもなります。
家庭では「これ、何の問題?」
家庭でおすすめの一言は、これです。
「この問題、何を聞かれているの?」
「抜き出し」と答えたら、もう一歩。「うん、それは書き方だね。中身は何を聞かれてる?」
「あ……『それ』が何かってこと?」——ここまで言えたら、その問題はもう半分解けています。
丸つけのときにこの一言を足すだけで、子どもは設問の中身を見る目を持つようになります。
まとめ
- 「抜き出しなさい」は答え方の指示であって、問題の中身ではない
- 「それが指す内容を抜き出せ」=指示語の問題。直前を探して、代入して確かめる
- 理由・心情・主張・言い換え——抜き出しの顔をした問題はたくさんある
- 見抜くコツは、設問を最後まで正確に読む(「何を」と「条件」に線を引く)
- 正体がわかると探す場所が決まる——さまよわずに済む
次の丸つけで、ぜひこの一言を。「この問題、何を聞かれているの?」——答えられたら、抜き出しは怖くなくなります。

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