「きのう、先生がそう申していました」——この文、どこが変だかわかりますか?

こんにちは。塾業界で20年以上、中学受験塾の塾長も務めてきたまつもも先生です。

今日のテーマは敬語です。小学5・6年生で習い、入試の知識問題でも定番。そして実は、大人でも間違えやすい分野です(冒頭の文の答えは、記事の中で)。敬語にもちゃんと覚え方のコツがあります。

敬語は3種類——まず全体地図から

敬語は、大きく3種類に分かれます。

  • 丁寧語……言葉の”よそいき”。「です」「ます」をつける、いちばん身近な敬語
  • 尊敬語……相手を持ち上げる敬語。「おっしゃる」「召し上がる」
  • 謙譲語……自分を下げて、相手を上に見せる敬語。「申す」「いただく」

イメージで言うと、尊敬語は相手をエレベーターで上の階へ。謙譲語は自分が階段を下りて、相手を見上げる。どちらも「相手を高い位置にする」ための、2つの方法なんです。

カギはたった一つ:「誰の動作か」

敬語の問題で子どもがつまずく原因は、ほぼ一つに絞られます。誰の動作かを考えていないのです。

  • 相手(目上の人)の動作なら → 尊敬語
  • 自分(や身内)の動作なら → 謙譲語

冒頭の文に戻りましょう。「先生が申していました」——「申す」は自分を下げる謙譲語です。それを先生の動作に使ってしまったから、変なのです。正しくは「先生がおっしゃっていました」。

敬語の問題は、言葉の暗記の前に、「この動作、誰がしてる?」という主語さがしの問題。授業ではいつも、「述語に注目しましょう。誰の行動かな?」「主語が『先生が』なら尊敬語、『私が』なら謙譲語」と伝えています。

尊敬語と謙譲語は、ペアで覚える

尊敬語と謙譲語には、形がガラッと変わる「特別敬語」があります。テストに出るのは、ほぼこの特別敬語たちです。尊敬語と謙譲語をペアで覚えましょう。言葉の後ろに「れる・られる」をつけて敬語表現にすることもできますが、テストではまず出題されません。

  • 言う……おっしゃる(尊敬)/申す・申し上げる(謙譲)
  • 食べる……召し上がる(尊敬)/いただく(謙譲)
  • 行く・来る……いらっしゃる(尊敬)/うかがう・参る(謙譲)
  • 見る……ご覧になる(尊敬)/拝見する(謙譲)
  • する……なさる(尊敬)/いたす(謙譲)

「いただきます」「お先に失礼いたします」——毎日使っている言葉の中に、謙譲語はかくれています。そこに気づくと、敬語はぐっと身近になります。

教室でよく見る間違い

  • 「先生が申しました」……謙譲語を相手に使ってしまう(正しくは「おっしゃいました」)
  • 「お客様がいただきました」……これも同じ間違い(正しくは「召し上がりました」)
  • 「おっしゃられる」……尊敬語の二重使用(「おっしゃる」だけで十分)

間違いの正体は、やっぱり「誰の動作か」。迷ったら、そこに戻れば大丈夫です。

敬語がわかると、物語文まで読めるようになる

意外に思われるかもしれませんが、敬語は読解にも効きます

物語文のセリフを見てください。「〜でございます」と話す人物と、「〜だよ」と話す人物。敬語の使い方から、人物どうしの関係(上下・親しさ・距離感)が読み取れます。急にていねいな言葉づかいになったら、それは気持ちが離れたサインかもしれない——敬語は、人間関係を映す鏡なのです。

家庭では「敬語ごっこ」

家庭でのおすすめは、敬語ごっこです。

「いらっしゃいませ。何になさいますか?」「ハンバーグをいただきます」——お店屋さんごっこや電話ごっこは、敬語の実戦練習にぴったり。「先生に言うなら、どう言う?」の変換クイズも手軽です。

敬語は、テストのためだけの知識ではなく、お子さんがこれから先ずっと使う一生ものの言葉の道具。家庭で楽しく使った分だけ、自然に身につきます。

まとめ

  1. 敬語は3種類——丁寧語・尊敬語(相手を上げる)・謙譲語(自分を下げる)
  2. カギはたった一つ、「誰の動作か」
  3. 特別な形は尊敬語・謙譲語のペアで覚える(おっしゃる/申す など)
  4. 敬語はセリフから人物関係を読み取る読解の武器にもなる
  5. 家庭では敬語ごっこで実戦練習

まずは今日の夕飯どきに。「ハンバーグをいただきます——さて、これは何語でしょう?」

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