こんにちは。塾業界で20年以上、中学受験塾の塾長も務めてきたまつもも先生です。
今日は、少し変わった角度から。自分とはちがう立場の主人公が出てくる文章の読み方です。男の子に、女の子が主人公の物語。今の子に、昔の時代の話。子どもに、大人が主人公の物語。——「共感できない」と感じる文章を、どう攻略するかのお話です。
入試は「わざと」共感しにくい文章を出す
まず、知っておいてほしいことがあります。
入試の物語文は、わざと”自分とちがう主人公”を選んで出してきます。
男の子の受験生に、女の子が主人公の話。現代の子に、戦争中や昭和の話。都会の子に、漁村や山村の物語。——これは意地悪ではありません。「自分と重ねなくても、書いてある通りに読めるか」を試しているのです。
つまり、「共感できないから解けない」は、出題者の思うつぼ。逆に言えば、ここを乗りこえられる子は、大きく差をつけられます。
大原則:「共感」ではなく「観察」で読む
ここが今日いちばんのポイントです。
物語文は、主人公に共感して読む必要はありません。
「自分だったらこう思う」で読むと、自分とちがう主人公のときに、道に迷います。そうではなく、登場人物を外から観察する。「この人は今、何があって、どう感じたのか」を、他人事として冷静に見る。
たとえるなら、主人公の親友になるのではなく、主人公を見守るカメラマンになるのです。カメラマンは、自分と性別がちがっても、時代がちがっても、被写体を正確にうつせます。物語文で必要なのは、共感力ではなく、この観察力なのです。
(これは、シリーズでずっとお伝えしてきた「気持ちは想像ではなく、文章から読み取る」と、まったく同じ考え方です。)
「知らない世界」は、文章が教えてくれる
「昔の話だから、様子が想像できない」——たしかに、井戸やかまど、着物の生活は、今の子には未知の世界です。
でも、安心してください。物語文は、読むのに必要な情報を、文章の中に必ず書いてくれています。知らない時代でも、知らない土地でも、その場面を理解するのに要ることは、文章が説明してくれる。だから「知らないから読めない」ではなく、「書いてあることから読む」でいいのです。
知らない言葉が出てきても、止まらない。前後から意味を推測する——語彙の記事でお伝えした力が、ここでも効いてきます。
「気持ちの読み方」は、相手が誰でも同じ
もうひとつ、心強い事実があります。
性別も時代もちがっても、気持ちの読み取り方そのものは、まったく同じです。
- 出来事があって、気持ちが動く
- セリフや行動に、気持ちがあらわれる
- きっかけがあって、気持ちが変わる
女の子が主人公でも、昔の子が主人公でも、この仕組みは変わりません。「くやしくてこぶしをにぎる」のは、男でも女でも、今でも昔でも同じです。人間の気持ちの動き方は、時代や立場をこえて共通している。だから、これまで練習してきた読み方が、そのまま通用します。
むしろ「知らない世界」を楽しむ
最後に、見方をひとつ変える提案です。
自分とちがう主人公の物語は、知らない世界をのぞける窓でもあります。女の子の気持ち、昔の暮らし、遠い土地の生活——本の中でなら、どんな立場にもなれる。「共感できない」を「知らない世界を旅できる」に変えられたら、物語文はぐっと面白くなります。
そしてこれは、国語の点数以上に大切な力です。自分とちがう立場の人を、想像し、理解しようとする力。物語を読むことは、その練習でもあるのです。
他者を理解できる子に入学して欲しいと、入試問題を作成する先生方は考えているはずです。だから、物語文が出題されるのです。
家庭では「この人はどんな人?」
家庭でのおすすめは、共感ではなく観察をうながす問いかけです。
音読のあと、「主人公の気持ち、わかった?」ではなく——「この主人公は、どんな人だった?」と聞いてみてください。
好きなもの、口ぐせ、行動のクセ。他人を観察するように主人公を眺める習慣がつくと、「自分と同じかどうか」に関係なく、人物をとらえられるようになります。
まとめ
- 入試はわざと共感しにくい主人公を出す——差がつくポイント
- 読み方は共感ではなく観察——親友ではなくカメラマンになる
- 知らない世界のことは、文章が必ず教えてくれる
- 気持ちの読み方は、相手が誰でも同じ(人間の気持ちは共通)
- 家庭では「この主人公はどんな人?」と観察をうながす
今夜の物語で、ひとつ聞いてみてください。「この主人公、あなたと似てる? ちがう? どんなところが?」——ちがいを見つけられたら、それはもう、しっかり観察できている証拠です。

コメント