こんにちは。塾業界で20年以上、中学受験塾の塾長も務めてきたまつもも先生です。
前回まで、気持ちの読み取り方と、変化の追い方をお話ししてきました。今日はその土台になる心情語(気持ちを表す言葉)のお話です。心情語のストックが増えると、読解の解像度が変わります。
知らない気持ちは、読み取れない
大事なことなので、はっきり書きます。
人は、自分が知っている言葉の分しか、気持ちを読み分けられません。
「ほこらしい」という言葉を知らない子は、主人公のその気持ちを「うれしい」としか受け取れません。近いけれど、ぴったりではない。選択肢問題で「誇らしさ」と「喜び」が並んでいたら、正しいものを選べないのです。
語彙力の記事で「知らない言葉は素通りしてしまう」とお伝えしましたが、気持ちを表す言葉でも同じことが起きています。
心情語は「プラス・マイナス」で仲間分け
心情語を増やすときも、いつもの整理法が効きます。プラスの気持ちか、マイナスの気持ちか。
プラス側
うれしい/楽しい/ほこらしい/満足/安心/感謝/期待/すがすがしい
マイナス側
悲しい/くやしい/不安/さびしい/心細い/腹立たしい/情けない/後悔/みじめ/いたたまれない
どちらとも言えない・ふくざつな気持ち
おどろき/とまどい/照れくささ/きまりが悪い/名残おしい
意味が正確に言えなくても、プラスかマイナスかがわかるだけで、選択肢は半分に絞れます。これは記事でくり返しお伝えしてきた通りです。
「うれしい」を、もっと細かく
同じプラスの気持ちでも、中身はちがいます。ここを分けられると、選択や記述の精度が上がります。
- うれしい……ふつうに良いことがあった
- ほこらしい……自分やだれかを、誇りに思う
- 満足……思ったとおりになって、心が満たされた
- 安心……心配ごとがなくなって、ほっとした
- 感謝……ありがたいと思う
「テストで満点を取った」ならうれしい・ほこらしい。「迷子の妹が見つかった」なら安心。——同じ”良い気持ち”でも、場面によって最適な言葉はちがいます。場面にぴったりの言葉を選べることが、記述の得点力です。
大人でも使える「気持ちを表す言葉」の増やし方
心情語は、放っておいても増えません。おすすめは3つです。
①物語を読んだら「気持ちを表す言葉」を書き出す
音読や読書のあと、「今の場面の気持ちは?」と問いかけてみる。心情語だけを集めるノートを作るのも良い方法です。語彙ノートの気持ち版ですね。
②「じゃあ、なんて言う?」と言い換える
「うれしい」と言ったら、「ほかの言い方だと?」と一歩深める。類義語の記事でお伝えした「ペアで覚える」が、そのまま使えます。
③親が使ってみせる
これがいちばん効きます。「お母さん、今日はちょっと心細かったわ」「それはほこらしいなあ」——親の語彙が、子どもの語彙のもとです。難しい言葉も、家庭の会話で使ってあげてください。
家庭では「今日の気持ち、ひとことで」
家庭でのおすすめは、夕飯どきの「今日の気持ち、ひとことで言うと?」です。
「楽しかった」で終わらせず、「どんなふうに楽しかった?」「ほこらしい? 満足?」と、少しずつ言葉を足していく。自分の気持ちに名前をつけられる子は、物語の登場人物の気持ちにも、名前をつけられるようになります。
そしてこれは、テストのためだけの話ではありません。自分の気持ちを言葉にできることは、生きていく力そのものです。
まとめ
- 知らない気持ちは、読み取れない——心情語のストック=読み取りの精度
- まずはプラス・マイナスで仲間分け
- 「うれしい」を細かく分ける(ほこらしい・満足・安心・感謝)
- 増やし方は、書き出す・言い換える・親が使ってみせる
- 家庭では「今日の気持ち、ひとことで言うと?」
今夜の食卓で、ひとつ聞いてみてください。「今日の気持ち、くわしく教えて?」

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